オトメナゲヤリ

はみだし女の備忘録&雑記ブログ

深イイ奇抜漫画『生理ちゃん』感想&レビュー

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 (画像出典:Amazon)

オモコロに掲載されていた小山健さんの『生理ちゃん』が書籍化されました。少し出遅れましたがKindle版を購入したのでレビュー・感想を書き留めておきます。

 

 

 

 

『生理ちゃん』とは?

 『生理ちゃん』は漫画家の小山健さんがオモコロで連載していたweb漫画です。

 


「大変なのを生理のせいにできないから大変なんです」

悩める女性たちの元にも、ツキイチで生理ちゃんはやってくる。

イタイ、ツライ、メンドクサイを吹き飛ばすほど、笑って泣けちゃう大傑作!

漫画「PMSちゃん」他、クスっと嬉しい描き下ろしもたっぷり収録!

Amazonより
 

 

 ……と、ここまでの情報でもかなりインパクトが強い作品であることはお分かりいただけたと思います。

 

 

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(画像出典:【漫画】ツキイチ! 生理ちゃん | オモコロ)

なんと、月に一度女性のもとへやってくる「生理」を擬人化した漫画です。うーん、斬新。

「生理ちゃん」は毎月女性のもとへ現れ、血を抜き、時に眠気、腹痛を与えて去って行きます。

 

 

 

感想・レビュー

男性視点という特異さ

この漫画を書いているのは、男性の漫画家、小山健さんです。

小山健さんは34歳(2018年7月現在)で、大阪にあるデザイン系の専門学校を卒業されているそうです。

会社員経験を経て漫画やイラストの執筆をやるようになったとのことで、人生、生き方、父親などをテーマにした漫画が多く、小山さんの人生観がよく表れているな~と感じました。

 

 

過去にこれらのような漫画を出しているからこそ、「生理」という題材を扱えたのかもしれません。

(性差別の意図は決してありませんが、)男性が生理を語るという事は、一部の女性からバッシングを喰らうことも多々あります。「男のくせに、女の苦しみが分かるか」と。

かといって「ごめん、俺男だからわかんないよ…」と、生理に対して無理解なポーズを見せると、「そんぐらい分かれよ!!私たちはこんなに苦しいんだぞ!!」とまたまたバッシング。

なんていうダブルバインドなんだろうと、男性を不憫に思ったこともあります。

でも、『生理ちゃん』では、小山さんのゆる~い絵柄とユーモアが、そのダブルバインドごと全部包んでしまったのです。

生理ちゃんというゆるキャラ(?)を創造し、生理をコミカルに描いているけれども、描かなければいけないところ――例えば、男性が「生理だからイライラしてんだろ」などと発言することに対しての女性側の苛立ち、同じ女性でも症状の大小によって苦しさを理解されない時があること、生理によってパフォーマンスが下がってしまうことの辛さ――などをしっかりとカバーしています。

この芸当ができるのは、本当に小山さんだけだと思います。

 

 

飛び出す名言

 この漫画のテーマである生理とは関係なく、ちょいちょい名言が飛び出します。

「コンビニ店員と生理ちゃん」では、昔ブスと言われたことが原因で、自分の器量に自信をなくしたコンビニ店員の女性が登場します。

彼女はそれ故に恋愛を諦め、独りで生きていくことをじわじわと決意するようになるのですが、そんな彼女の元にも生理ちゃんはやってくる!!

生理ちゃんに向かって「……もう来なくていいよ。わたし一生独りだし」「ブスなだけでツラいんだから、さらにツラくさせることないじゃない」と彼女は言います。

しかし、生理ちゃんは「ブスじゃないよ」と励まします。

さらに、「昔に言われた悪口なんて、たいていはただの呪いなんだから」、と。

これ、どんなことにも当てはまる、作中屈指の素晴らしい名言だなと思いました。

生きているのは今この現在なのに、過去に遭ったこと・言われたことに縛られてしまうのはよくあることです。

そうした誰にでもある、でも深刻な問題に対して、この言葉は救いの手を差し伸べてくれるものです。

過去に言われたことは呪い、そう振り切って生きていく勇気を与えてくれます。

実際には、このコンビニ店員は、他人から見るととても可愛い顔立ちだったのです。

昔他人に何気なく言われた言葉の効力って、本当に怖いですよね。

 

 

 

女同士の無理解

男性の小山さんが生理に対する「女同士の無理解」をしっかりと描いていたことに感動しました。

「スーパーヒロインと生理ちゃん」という話に出てきたのは、プリキュアのように変身して戦う女子高生二人。

二人は先輩後輩の関係ですが、先輩のめぐるは生理が軽いタイプ。対して後輩のとなりは顔がパンパンに腫れ上がったりとかなり重い方です。

そんな二人が両方とも生理のときに、悪の手先が攻めてきます。

しかし、となりは生理が重く戦えず、めぐるだけで敵に挑みます。

そんなときに彼女が放った一言がこちら。

 


「ツライのはわかるけど、せめてできることはやってくれないと甘えてるんじゃないかと思っちゃうよ

「私だってツライけどがんばってるよ?最終的にはやる気なんじゃない?

 

 

戦う女子校生というコミカルなシチュエーションだからこそ、言葉のとげが緩和されていますが、こういったフレーズを実際に学校やオフィスなどで放つ女性はたくさんいます。

 

私にもそのような経験がありました。

サプリなどを飲んで上手く調整していても、生理前に身体がだるくてどうしようもなくなる時があります。

大学の医務室で少しだけ休もうと思って尋ねたところ、年配の女性の養護教諭がぽつり。

 

「社会に出たら休むわけには行かないのよ、学生のうちから管理しなくちゃ」

 

……は?

いやいやいや、管理した上でもどうしようもないときあるから!!だって人間だもん!!

私は思わずブチ切れて、その年配の養護教諭に、自分がいかに普段努力して健康管理をしているか説明しました。手帳を片手に、「睡眠時間の記録をつけて、生理周期はルナルナで管理、調子が悪いときは薬で調整して、食べ物にも気を付けている、それでも人間なんだから具合が悪いことだってある!!!!!!!」と精一杯主張しました。

もはや気だるさも吹っ飛ぶほど怒りに怒って(本当にあの時は恥ずかしいぐらい無我夢中でブチ切れちゃいました)、最終的に養護教諭は謝罪してくれましたが、それからなんとなく、医務室にはいかないまま、私は別の大学に編入していきました。こうした経験をたくさんしてきて、それに対して許しがたい何かとか考えるのを避けられないことがあるから、今ジェンダーを専攻しているのだと思います。

だいたい、養護教諭の言ったような「休むことができない社会」なんかであれば、私は参画したくありません。

生理に限らず、誰かの無理解が休むことの出来ない社会を作っているのではないでしょうか。

とにかく、女同士の無理解は、生理を語る上で外せない重要なポイントです。それを上手くあぶり出した小山さんには、称賛の言葉しかありません。

 

 

 

生理の歴史

「町娘と生理ちゃん」では、江戸時代の生理に対する社会的観念を描いていました。

江戸時代では、生理期間中の女性は「月経小屋」に行って、生理が終わるまでそこで過ごさなければならないという風習がありました。

地域も限られていたそうですが、現代では信じられないことですよね。

なぜこのような風習があったかといえば、つい最近まで、日本では生理は穢れと考えられていたからです。

つまり、穢れを隔離するために月経小屋が存在していたのです。

しかも、それもとても粗末な小屋で、満足な設備もありません。冬場はとてもつらかったことでしょう。

作中では、男の子がふざけて「月経小屋」に石を投げ、驚いて出てきた女性たちを「穢れだ、ばっちい」といって揶揄うシーンもあります。

それほど、生理はタブーなものだったのです。

 

近現代まで生理には暗くネガティブなイメージしかありませんでした。

しかし、こうした穢れの印象を払拭すべく尽力した坂井泰子さんのストーリーが「おばあちゃんと生理」によって語られています。

それまで女性たちは黒いゴムひきパンツで脱脂綿を抑えていたのですが、トイレで取り換えるときに脱脂綿を流してしまい、よく詰まるという事故があったそうです。

当時発明サービスセンターを運営していた坂井さんは顧客から脱脂綿を受けるネットを作ってくれという依頼を聞いて、「そもそも脱脂綿を使わなければいいんじゃないか」と思いつきました。

既に海外ではナプキン、パッドが販売されていたので、それを日本人向けに作り替えることを提案し、苦節の末にナプキンの先駆けともいえる「アンネナプキン」を開発しました。

今私たちが快適なナプキンを使えるのも、彼女のおかげでしょう。

また、明るいパッケージやCMのおかげで、生理に対するイメージは徐々にポジティブなものへと変化していきました。

 

 

こうした生理の歴史についても触れた小山健さんの『生理ちゃん』、老若男女問わず誰にでも読んでほしい一冊です。2018年の私のベスト漫画になりそうな予感がします。